How to SING ~心に響く歌~ ⑦ メロディーと心 (2)

 

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How to SING ~心に響く歌~ ⑥ メロディーと心 (1) からの続きになります。

 

 

 

植村
じゃあたとえば、「おはよう!」って普段言ってる感じで言ってみてください。

 

歌好きのAさん
「おはよう」……ですか?

 

植村
はい^^

 

歌好きのAさん
えぇっと、なんかちょっと緊張しますね。

 

植村
べつに、だいたいでいいですよ^^

 

歌好きのAさん
はい。・・・・・・じゃあ、

 

歌好きのAさん
「おはよう!」

 

歌好きのAさん
・・・・・・こんな感じでいいっすか?

 

植村
Aさんは役者は無理そうですね(^。^)

 

歌好きのAさん
別に目指してないすから・・・(^_^;)

 

 

植村
はい。いいですよ。じゃあ、では次に、昨日めっちゃいいことがあって、「ああ、早くだれかに話したい~~!」って時の「おはよう!」をお願いします!

 

 

歌好きのAさん
え、まだやるんすか?なんか劇団の練習みたいになってきましたけど・・・。

 

 

 

 

植村
(#^_^#)

 

 

 

歌好きのAさん
・・・・。はいはい。やります!ちょっと待ってくださいね。心の準備が・・・。はい。行きます!

 

 

歌好きのAさん
「おっはよう〜!!」

 

 

植村
おお、いいですね!!なんか乗ってきましたね!

 

 

歌好きのAさん
ムリムリっすよ(^o^;)

 

 

植村
では、次で最後です。今度は、昨日最愛の彼女にフラれてしまってテンションだだ下がりの朝に、友達から「おはよう!」と声かけられて、それに仕方なく答えるときの「おはよう。」をお願いします!

 

 

歌好きのAさん
なんか先生、めちゃ楽しそうっすね(¯―¯٥)

 

 

植村
(#^_^#)

 

 

歌好きのAさん
はいはい、・・・じゃあいきますね。

 

 

歌好きのAさん
「・・・ぉはよぅ。」

 

 

植村
はい!OKです!!いやあ良かったです。堪能できましたぁ!^^

 

 

歌好きのAさん
やっぱ楽しんでるんじゃないっすか!^^;!

 

 

植村
すみません、すみませんヽ(^。^)ノ

 

 

植村
さて、いま、3種類の「おはよう」をやってもらったわけですが、どんな「高さ」で「音色」で「ボリューム」で「テンポ」で出すかって、……考えました?

 

 

歌好きのAさん
もちろん考えてないです(自信満々で)。

 

 

植村
ですよね!じゃあ、何を意識したかって言ったら、それぞれのシチュエーションでの気持ちじゃないですか?「めっちゃ話したい!!」とか、「辛い……」とか。

 

 

歌好きのAさん
たぶんそうだと思います(自信なさ気で)。

 

 

植村
それをイメージしたら勝手に声が大きくなったり、高くなったり、小さくなったり、低くなったりしたんだと思うんです。

 

 

歌好きのAさん
まあ、・・・そうっすね、たぶん(投げやりに)。

 

 

植村
役者さんというのは、そういう仕事ですよね。台本(セリフや場面設定)から登場人物の気持ちをイメージして、自分の中にそれを起こします。

 

 

植村
決められたセリフや演出に対して、その役の気持ちを作り上げてゆきます。それと声や表情、体の動きなどが違和感がないか、嘘つくことがないか、精査しながら自分の演技の方向を見極めてゆきます。それが自分の中で自然になるようにそしてどんどんと深く入っていけるように何度も繰り返してゆくんです。

 

歌好きのAさん
分かるような分からないような感じっすね……。

 

 

植村
そうですねぇ。言葉で表すのはとても難しいです。

 

 

植村
でも、たとえこうしたことを完璧に言葉に出来たとしても、それを理解したらといって、すぐに演技や歌に表現できるかっていうと、なかなかそうはいかないと思います。

 

 

植村
理解すればすぐ出来るんだったら、頭のいい人が歌も演技もうまいってことになりますからね。

 

 

歌好きのAさん
おおっ!それは困ります!(^0^;)!

 

 

植村
いやいや、ホントに!(^_^;)!

 

 

植村
頭で理解したからやる、できるんじゃなくて、なんとなくのままやってみて、それを感じてみるというのがとても大切なんです。

 

 

歌好きのAさん
なるほど。

 

 

植村
ともかく、役者さんは台本からイメージを膨らませて、自分の演技に昇華してゆくわけですが……、

 

 

歌好きのAさん
はい。

 

 

植村
では、歌手は何からイメージを膨らませてゆくと思いますか?

 

 

歌好きのAさん
・・・やっぱし、歌詞ですか?

 

 

植村
もちろん、それもあります。

 

 

植村
歌詞によって気持ちが昂ぶることはよくあることです。歌詞はとても重要ですよ。でもそれだけだと言葉によるイメージの喚起ということで、演技と基本的に何も変わらないことになりますよね?

 

 

歌好きのAさん
ほんとだ。確かにそうっすね……。

 

 

植村
・・・・・・じゃあ、演技と歌の違いってなんですか?

 

 

歌好きのAさん
うーん……。

 

 

歌好きのAさん
やっぱし、メロディーがあるってところっすかねぇ……。

 

 

植村
そうです!!!

 

 

歌好きのAさん
うわっ、びっくりした!

 

 

植村
メロディーから自分の感情やイメージをリンクさせて歌の衝動へとつなげているんです。

 

 

植村
メロディーは、映画やドラマにおけるセリフと同じなんです。役者はセリフから気持ちを作ってゆくし、歌手はメロディーから感情を込めてゆくんです。

 

 

植村
歌の一番大切な部分はメロディーです。メロディーをもっと心で感じることを大切にしてゆかないといけないんです。

 

 

植村
では、そのメロディーって、最初にどんな要素があるって、僕言いましたっけ?

 

 

歌好きのAさん
えぇと、まず、「高さ」ですよね。

 

 

植村
はい。

 

 

歌好きのAさん
それと、えー、「長さ」。

 

 

歌好きのAさん
と、うーん、なんでしたっけ……。あともう一つありましたよね。えぇーと・・・。

 

 

植村
1,2,3,4、………っ。1,2,3……はい!

 

 

歌好きのAさん
ん?……ああ、「タイミング」ですね!(笑)!

 

 

植村
そうです!伝わって良かったです(^^ゞ

 

 

植村
お芝居の「台本」に、この3つの指定はありません。「かん高い声で叫ぶ」といったト書きはあるかもしれませんが、「ミの音で」とか、「442Hzで」といった文言は台本にはないでしょう。長さやタイミングについても同じです。「符点四分休符の間を空けて」とか、「3.85秒声を伸ばす」などと書かれることはありません。

 

 

歌好きのAさん
絶対音感のある人しか役者になれなくなっちゃいますね・・・^^;

 

 

植村
そうですね^^;

 

 

植村
役者さんは、例えば「愛してる」というセリフがあれば、前後のセリフや諸々の設定から、このセリフを言う時の登場人物の気持ちを想像して、その気持ちになって「愛してる」と演技します。

 

 

植村
そこで、「もうちょっと自信のない感じかな」とか「なかなか言い出せないでいる感じかな」とか微調整して、また「愛してる」と言います。

 

 

植村
これを繰り返して自分の中で一番しっくりくる「愛してる」を見つけるわけです。

 

 

歌好きのAさん
なるほどです。

 

 

植村
つまり、役者さんの仕事はセリフなど台本に合わせた気持ちを作ることだと言えます。

 

 

植村
気持ちが出来ればセリフや動きは自ずと良い表現になるわけです。

 

 

植村
もちろん、それを可能とする発声や身体・表情のコントロールなどの基礎力があってこそ、ですけどね。

 

 

歌好きのAさん
やっぱし!

 

 

植村
では、歌手はどうかと言うと、メロディーに自分の気持ちを投影してゆくわけです。

 

 

歌好きのAさん
はい。

 

 

植村
よく「曲の背景や歌詞の意味を理解して」……など言われることがありますが、これには僕は基本的に反対の立場です。

 

 

歌好きのAさん
そうなんすか?

 

 

植村
はい。……ってか、別に曲の背景や歌詞は無視しろとか、どうでもいい、と言ってるわけではないですよ。むしろ曲の重要な要素だと思います。

 

 

植村
ただ、曲の背景や歌詞をより詳しく(正しく)表現するのが「歌」ではないと僕は思っています。

 

 

歌好きのAさん
どういうことっすか?

 

 

植村
例えば、「君と出会えて良かった」といった内容の甘いバラードがあったとします。

 

 

植村
ちょっと不謹慎なたとえになっちゃいますけど・・・、その歌を歌っているアーティストの恋人がライブの前日に交通事故で急に亡くなってしまって、翌日のライブでこの曲を歌ったとしたら、どうでしょうか?

 

 

植村
甘いバラードが一転して、その歌手に起こった悲劇を強烈に物語る歌になりますよね。

 

 

歌好きのAさん
そうっすね・・・。

 

 

植村
もう会場中が大号泣になります。

 

 

植村
今まさにこの瞬間の歌い手の「気持ち」にお客さんは心動かされるわけです。

 

 

植村
その「気持ち」は歌詞によって動くこともあれば、メロディーによって動くこともあります。

 

 

植村
歌うということは、その思いを高さ(メロディー)に乗せるということです。

 

 

植村
自分の思いと、出している声の高さとがリンクしていないといけないのです。

 

 

歌好きのAさん
はい。

 

 

植村
それが演技だと、気持ちが即、声や動きなどに変換されます。ですが、歌の場合、歌詞(演技におけるセリフ)以外に高さや長さなどが指定されているわけです。それを踏まえて、心をフォーカスしてゆく必要があります。

 

 

植村
「高さ」「長さ」「タイミング」といった要素をどんな気持ちで捉えて声にするのか、という経験をたくさん反復してゆくことで、自分の気持ちが声に投影する純度を高めるわけです。それが歌手のすべきトレーニングの一番大切な部分だと僕は思っています。

 

 

歌好きのAさん
なるほどです。

 

 

歌好きのAさん
・・・でも、なかなかムズそうっすね。

 

 

植村
そうですね(^^ゞ
誰でも簡単にすぐできるものではないと思います。

 

 

植村
でも、すぐにはできなくても、ずっと追い求めてゆくなら程度の差こそあれ、できない人は絶対にいないと僕は思います。もし、出来ない人がいるとしたら、自分の声や歌、表現じゃなく、まだなにかのモノマネや幻想を追いかけているんだと思います。

 

 

歌好きのAさん
ムズっ!

 

 

植村
そうですね、どうしても言葉での解説には限界があるので、ひたすら繰り返してゆく中で自分のパターンを知ってゆくしかないと思います。

 

 

歌好きのAさん
う~ん。

 

 

植村
でも、それが楽しいっていうのが歌が好きな人何だと思います。

 

 

植村
たとえばゲームで言えば、はじめから一回も失敗せずに最後までかんたんにクリアできるようなゲームしかないとしたらすぐに楽しくなくなって飽きちゃいますよね?

 

 

歌好きのAさん
たしかに。

 

 

植村
ゲームが好きだからこそ、難しいほうが燃えるし、それをクリアする自分なりのパターンを作れたら嬉しいんだと思います。

 

 

歌好きのAさん
そうっすね。

 

 

植村
それがピアノだと続く人はピアニストに、ギターの人はギタリストってことなんだと思います。

 

 

歌好きのAさん
なるほどです。

 

 

植村
それが僕たちは歌なんだってことですね^^

 

 

歌好きのAさん
そうっすね!・・・一応。

 

 

植村
さて、メロディーには、「高さ」「長さ」「タイミング」とあるわけですが、その「高さ」にフォーカスした練習メニューが前にやった『一つ一つ出す』なんです。

 

 

歌好きのAさん
なるほど!!!

 

 

植村
メロディーそれぞれの「高さ」を、「長さ」や「タイミング」は一旦無視して、声を出しながら自分の心の動きと連動する純度を高めてゆくわけです。

 

 

歌好きのAさん
おお!なんかすごそー!

 

 

植村
そーですよー!すごいですよー!それをAさんもやるんですよー!

 

 

歌好きのAさん
うわっ、返ってきた(^^ゞ

 

 

植村
というわけで、引き続き「高さ」にフォーカスしてゆくわけなんですが、前回やった「一つ一つ出す」を今度はメロディーとして繋げてゆきましょう。

 

 

歌好きのAさん
はい!!

 

 

 

 

How to SING ~心に響く歌~ ⑧ メロディーと心 (3) に続きます・・・・・・。

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植村
なかなか今回はいつもに増して言葉の説明がややこしくなってしまいました・・・。

 

 

歌好きのAさん
なかなか難しそうですね。先生、この記事書くのにめちゃ時間かけてますもんね。

 

 

植村
また時間があったら動画とかで説明したいと思います。

 

 

歌好きのAさん
それがいいです!

 

 

植村
絶対の約束は出来ませんが、なるだけがんばります!!!

 

 

歌好きのAさん
乞う、

 

 

植村
ご期待!!!