さて、前回は『一つ一つ出す』というレッスンについてお話しました。
ですが、現実的にあのまま歌うことは出来ません。
もし、そのままのやり方でステージに立ったなら、観客席のほとんどの人は怒って帰るか寝てしまうことでしょう。
なにせメロディーを一つ一つ分けて歌っていたのでは、一曲が30〜60分以上もかかっていまいますからね。
・・・っていうより、まず歌ってる本人の脳ミソが煮えてバーストしてしまうと思います。
それだけ「一つ一つ出す」というメニューは、集中力とエネルギーが要るわけです。
今回は、あなた(もしくは「歌好きのAさん」^^)が『一つ一つ出す』のレッスンで何らかの感覚がつかめてきたとして、その次のステップに当たる『メロディー』に進んでゆきたいと思います。
「メロディー」って何かと言えば、
・音の高さ
・音の長さ
・音を出すタイミング
といった要素がありますが、これらをつなぎ合わせた一筋の線がメロディーと言うことができます。
これらを正確に出せば心に響く歌になるかと言えば、もちろんNOです。
カラオケで音を外さずに歌える人はみんなプロになれるか(=人の心を動かすことができるか)というと、そんなはずないですよね(・・;)
そんなに単純なことなら、歌手になるというのは、時給1000円程度のアルバイトとそんなに変わらない難しさになります。
(現実的にも、ボイストレーナーや音楽講師の方たちでそのくらいの時給で働いている人がたくさんいると思います・・・。)
さて、そもそも『メロディー』とはなんでしょうか?
『一つ一つ出す』でも使った『ひまわりの約束』を題材にまた歌好きのAさんと話してゆくことにしましょう。
~~また、ある日のレッスンにて~~
さあ、今日は「メロディー」についてお話してゆきますよ。
うわっ!めっちゃたのしみっす!
よろしくお願いします!
はい!
さっそくですが、「メロディー」って言ったら、やっぱり音の高さを思い浮かびますかね?
カラオケとかでも「音程」がいいとか悪いとか言いますもんね。
そうっすね。カラオケの採点とかでやっぱり音程の点がいいとメロディーがちゃんと取れてるのかなぁって思います。
そうですね。長さやタイミングなど他の要素もありますけど、だいたいメロディーといえば、高さのイメージになりますよね。
ちなみに、Aさんはカラオケ採点の音程の点数はいい方ですか?
まあ、普通よかいい方かなって思うっす。
てへっ(^^ゞ
そうでしょうね。レッスンで歌を聞いてる限り、そんなに音を外したりしない感じですもんね。レッスンでは、アレコレ言ってますけど^^;、Aさん、普通に上手ですもんね!
じゃあ、カラオケで音程を外さずに歌える人はめっちゃいっぱいいると思うんですけど、そういう人たちとプロの歌手との違いって何だと思いますか?
はやっ!即答ですね。・・・そこですか?まあそこもありますけど、もう少し音楽的なところで。
もちろん、そうですよ。言葉にすると、「表現力」となってしまいますね。
プロとの違いって、発声だったりテクニックだったり色んな要素かあると思いますが、プロの歌手でもあんまり上手くないかも、ってこともあると思いませんか?ライブだとけっこう音がズレてたりとか……(^_^;)
そうっすね^^;。たまに生放送の歌番組で、「あれ?この人ちょっとヤバイ(悪い方の意味で)んじゃない?」って思う時ありますもん。
確かにありますね………。でも、カラオケで音程を外さない素人さんがコンサートをして、その歌手よりもお客さんを楽しませられるかっていうと、それはなかなか無理そうじゃないですか?
それはそうっすよね。「この人ヤバイ」って思った人の代わりに「じゃあ、おまえやれ!」ってことになって、ボクが武道館でお客さんを盛り上げろって言われても到底無理っすもん。
だからプロなんですね。音を外さないかどうかじゃなくて、お客さんを喜ばせられるかどうかなんですね。
歌以外にも曲や詞の良さもありますし、知名度や人柄、ルックス、ダンスなどのステージング、・・・などほんと色んな要素でお客さんを魅了するわけですが、声に限って考えてみた時、発声やテクニック以外で、何があると思いますか?
……やっぱ、声の強弱とか音色変化とかビブラートとかですか?
………ちょっとふざけちゃいました(^^ゞゴメンチャイ
じゃあ、もう一度、この前の『ひまわりの約束』でメロディーについて考えてみましょう。
いえ、ぜんぜん大丈夫ですよ。答えるのに結構間があったから、知ってて思い出してるのかなと思ったんです。
全く知らないです。考えてみたけど、やっぱり分かりませんでした^^
そうでしたか。別に歌をうたうこと自体には、譜面が読める必要も、なんの音か(ドなど)知る必要もないですから、安心してくださいね。
では、ちなみに『ひまわりの約束』の最初の音は「レ」なんですけど、なんで「レ」から始まるんでしょう?
まあ、音楽理論的にアレコレ言う人もいるかもしれませんが、ここでは学術的なことは無視しますね。
さて、作曲者(この曲の場合は秦基博さん)の意図は僕たちには分かりようがありませんね。そもそも、作曲者自身も何か答えをわかって一音一音メロディーを決めているんじゃなくて、あ、この音がいいかな、という音をつむいでメロディーにしていることが多いと思います。
答えがあるわけじゃないってことは、感覚的なこと、抽象的なことを感じてゆくところに意味があります。
えーと、『ひまわりの約束』のメロディーは、「レ・ド・シb・ド(♪どうして~)」で始まるんですけど、最初の音を変えて「ド・ド・シb・ド」にしたらどうなると思います?
・・・・・・はい。まずこれが普通のメロディーですね。
ですよね!メロディー変わってなかったからびっくりしたっす!
あぁ、すみません(笑)。違いが分かるほうがいいかなぁっと思って先にメロディーを歌っちゃいました。
じゃあ、次は「♪どうして~」の「♪ど」の音を「レ」から「ド」に変えて歌ってみますね。
なんか、パッとしないというか、地味な感じがしました。
じゃあ、今度は「レ」を「ファ」に変えてみますね。さっきは頭の音を下げたんですけど、今度は高くしてみるので、どう変わるでしょうか。
さっきよりは悪くない気がするですけど、なんか強すぎる感じがしますね。いびつって言うか・・・。
そうですね。僕もだいたい同じような感じです。悪くはない感じもしますが、しっくりとは来ないです。
メロディーの高さには意味があります。なぜこの高さなのかという意味があるんです。
この意味とは論理的なものではなくて、感情的なものです。最初の音は「ファ」でも「ド」でもなくて、「レ」が気持ち的にピッタリの高さだということなんです。
その感情の流れを一つの音の流れにしてゆくのがメロディーなんです。
あっ!もう完成された曲を聞き慣れてしまってるから、「レ」がピッタリと思うのもあるんじゃないんすか?
さすがです!もちろんそういうところも多分にあります。
でもそれだけじゃなくて、その曲の持つ世界観があって、それには今のメロディーラインがちょうど良かったからこそ、多くの人に受け入れられたんじゃないかと思います。
でも、世界観ってなんなんすか?よく分からないです、ボクには……。曲の雰囲気とかならなんとなくこんな感じかなって、分かるんですけど。
How to SING ~心に響く歌~ ⑦ メロディーと心 (2) ・・・・・・へと、続きます。
またこの後も、あれこれと話が飛んでゆく予定ですが、しっかりと付いて来てくださいね!
もうすでに飛ぶ予定なんですね。がんばって付いてゆきます!!!