How to SING ~心に響く歌~ ⑤ 『一つ一つ出す』Vol.3
『一つ一つ出す』の Vol.1、Vol.2 からの続きになります。
(ぜひVol.1からお読みください。)
今回は、記事の最後に動画を載せました。
言葉で足りない部分を少しでも感じ取ってもらえたらと思います。
では、まずは、本編からどうぞ!!!
・・・・・・・・・レッスンは続く・・・・・・・・・。
実際のレッスンでは説明よりもっと声を出して感じてもらうことに重点を置いてレッスンを進めてゆきます。
言葉で書くと難しそうに思えるかもしれませんが、このレッスンを通じて「いつもと違う感覚」を感じ取られる方は結構多いです。
もちろん感じ取る深さの度合いは人によって異なりますが、共通しているのが「心地よさ」です。
何らかの「心地よさ」が無ければ、おそらく頭で考えすぎていたり、他者や事柄をなぞろうとしている状態です。
この「心地よさ」はある種のカタルシス的なものです。
このカタルシスが、表現の入り口に立たせてくれる案内役になると私は考えます。
この『一つ一つ出す』レッスンは、『今この瞬間の自分になる』というものです。
歌唱技法や楽曲(作品)として完成形を目指すものではなく、今ここにいる自分が100%声に表出するのを目指すものです。
なので、一年後、ニ年後に同じことをしてみると、また異なった発見があり、より深い感覚を感じることができるようになります。
『一つ一つ出す』レッスンとは、自分が実際に出す声と頭の中のイメージとを繋げるレッスンです。
このレッスンで、「声」が自分の中と外をつなぐ架け橋になる感覚が見えてきます。
それは周りを一切気にせず、やりたいことを思いっきりやっている時の感覚に近いかもしれません。
とても不思議な感覚です。
時間も空間もなく、どこまでも限りなく自分。
そんな感じです。
スポーツをやっていた生徒さんと話をしてて思うのは、競技者が極度の集中をした時に起こる精神状態「ゾーン」「フロー」「フローティング」と呼ばれる感覚に近いと思います。
一体感とでもいうか、自分が拡大してその場を満たしている(その部屋全部が自分という感覚)というような感覚です。
今、自分が出そうとしている声をとことんフォーカスしてゆくことで、自分の深い部分とつながります。
ユングの言うような「集合的無意識」と繋がることで、普段は決して意識の及ばない「一体感」を感じるのかもしれません。
『声』=『自分』=『世界』
といった感覚です。
その状態から発せられた声は力を持ちます。
人の心を大きく動かすものとなります。
無意識の部分で繋がった声だからこそ、自分の中で起こった「心のさざ波」が、聞き手の心にも同じ波紋を起こすのかもしれません。
「歌を歌う」ということは、
高い声を出すことではなく、
完璧な発声をすることでもなく、
ピッチやリズムなどを完璧にすることでもなく、
強弱、固柔、長短、などの音声変化などを表現として駆使することでもありません。
「歌を歌う」ということは、
自分を深く知ってゆくということです。
声というバイブレーターを使って、自分の内面と自分の外側に同じ振動を起こすことです。
自分とその周りを取り巻く世界とが実は一つであると知り、その繋がりを認識することです。
別に変な宗教団体に勧誘する気でも、高い壺を売り付ける気もありません。
っていうか、いちいちこういう断りを書かなくてはいけないことをとてももどかしく思います……。
もっともっと、心のことや人生のことを深く話せる世の中になればいいなと思います。
「歌」という心に作用するものを考える時に心の在りようを考えないというのは、逆に思考の停止したおかしい状態だと強く思います。
歌詞に気持ちを込めたり、ミックスボイスを練習したりするのもいいですが、それ以前に、自分のことをもっと大切にして、「上手い」歌ではなく、自分にしか歌えないものを探してみてはどうでしょうか?
最後に、なかなか言葉では伝えるのが難しいかなぁと思ったので、動画で解説をしてみました。
声の見本や解説など文字を目で負うよりはずっとずっとイメージが湧きやすいかと思いますのでご覧いただけたらと思います。