『ボーカリストのためのフースラーメソード (武田梵声・著 / リットーミュージック)』
『ボーカリストのためのフースラーメソード』(武田梵声・著 / リットーミュージック)
「what we recommend」のコーナー、最初の紹介は、やはりこの本。
アンザッツの記事でも紹介していますが、
値段も装丁も比較的手に取りやすい感じなのですが、中身は驚くほど深く、
読み出してから三年が過ぎてもなお学ぶところが山盛りで、私の仕事に欠かすことの
武田先生の本がその他のボイトレ本と異なる点は挙げるときりが無いのですが
「声楽(クラシック)的な声を至上の声とせずに、
だと私は思います。
声楽的な声は実は珍しいタイプの声で、
明治維新以後、西洋の文化を善しとし、「声」においても「旋律」
しかし声に良いも悪いもありません。
ロックな声もジャジーな声も、
確かに発声的に自由で健全な状態かどうかというのはあります。
ですが、普通、発声やボイトレと言えば、J-
そうではない場合も、声として良いとされるのは、
これまでのボイストレーニングは、「良い声」
本来喉がどのように働いているのかの検証もなく、ただ、
それによって多くのボーカリストが喉やアゴなど身体に問題を引き
「声」とは力(呼吸)によって従えられるものではないのです。
加えてこの本は、アンザッツを超えて、『ガム(俗に仮声帯発声と呼ばれるノイズ成分を含む発声方法)』やメンタリティー(表現する際の意識の状態)についても述べています。それぞれ一つだけでもかなり深い内容なのに、
アマゾンなどのレビューで、
なかなか聞きられない声だと思うので、
でも、それらは声に対する自分の価値観(
ここで聞きたいのは、CDの見本の声がそれぞれ何を目指しているものなのか、というところなのだと思います。
当たり前ですが世界中のボーカリストがCDの見本のような声になって
少なくとも私は、ボイストレーナーとしての職業病的な理由もありますが、CDの見本の声にとても感じるものがあります。ですが、ライブや作品など自分の表現の中で、CDそのままの声をやりたいとは思いません。
それでもこの本や付属のCDのことを私がスゴイと思うのは、
本質は、それが本質であるが故に、
書いている内容もボイストレーナー仲間の間でも「難しい」とため息が出るほどのもので、決して初心者に優しい分かりやすい本といった類のものではありません。でも真剣に『声』と向き合おうとしている人にはいつか必ず「この本を持ってて良かった」と言える日が来ると思います。
ただ、今では出版社では廃版となり、入手が難しいようです。発声に関わる本で廃版になるものがとても多いです。
願わくば、出版社の方に再版して頂いて、より多くの人の手(特にボイストレーナーの方)