教えること 教わること
最近、
「歌を歌うことにフォーカスしている」
というようなことをよくブログに書いています。
でも、
ボイストレーナーという仕事に就いているので当たり前かもしれませんが、
私は「教える」という仕事がとても好きです。
もちろん、人に偉そうにできるとか、そんなチープな理由ではなく、
いろんな方の人生に関われて、
その人が良い方向に行くためのお手伝いが出来るというのは
とても楽しいし、素晴らしいことだと思います。
それは、キレイゴトではなくて、
どんな人にでもある普通の気持ちだと思います。
また、私は教わるのも好きです。
昔はいろんな先生に習いに行きました。
発声関係の本も見つけ次第、購入しました。
(そのまま積ん読で終わる本もいっぱいありますが^^;)
教えるのも、教わるのも、
きっと、
『響き合う』ということなのかなと思います。
レッスンで「こうなんだ!」と声高に言ってみても、
いまひとつ伝わらないなと感じる時があります。
正しい(と思う)ことを熱く語ったところで、
相手の心に届かなければ何の意味もありません。
歌も同じです。
完璧な発声で、
完璧なピッチやリズムで、
歌詞の世界を表現して、
目を瞑らないでちゃんとお客さんを見て、
笑顔で歌って、
……。
………。
…………。
「・・・・・・で、何?」
結局、お客さんの心に何か爪痕を残せれば、
正しい歌い方かどうかなんて何の意味もありません。
お客さんの心に爪痕を残すためには、
世の中で良いとされるものをするのではなく、
自分にしかできないことをしないといけません。
自分にしかできないことと言っても、
コウモリばりの超音波を出すとか、
今までにない全く新しいジャンルを切り拓くとか、
そんな難しいことを言ってるわけではありません。
自分自身の中にすでにあるものをアウトプットするだけです。
「じゃあ、一体ボクの中に何があるの?」
ここから、自分との対話が始まります。
このやり取りを何らかの形で通り抜けてきた人が、
人に何かを伝えられるのかなと思います。
ボイストレーニングの世界も・・・、
フースラーメソードだとか、
SLSだとか、
腹式だとか、
腹式じゃないとか、
確かに論理として、必ずどこかに「正しい」は存在するはずです。
でもそこばかりを求めるのではなく、
論理を超えて、自分の身体と心で何かをつかんではじめて、
人に何かを伝えられるのだと思います。
(もちろんちゃんとした理論を追求することもとても大切です)
教わる方も、同じように先生の言うことを鵜呑みにせずに、
ちゃんと自分の心と身体で感じることがとても大切だと思います。
昔、音楽学校に生徒として通っていた頃、
今は亡き亀渕友香先生のレッスンがありました。
私がアル・ジャロウというアーティストの曲を課題に持ってゆくと、
翌月のレッスンの時(月に一回のレッスンでした)、
「植村くんがアル・ジャロウ好きだっていうから、久しぶりに聞き直してみたわ」
とおっしゃいました。
芸能人や一流アーティスト相手にレッスンをされている先生が、
ただの一素人の好きなアーティストを気にして下さり、
一ヶ月経ったその子のレッスンの時に、
それを覚えていて、その話をしてくれるってのはすごいことだと感動しました。
でも、それは亀淵先生がとても生徒思いだったというのではなく、
(もちろん生徒思いな方なんですけど、そういう意味じゃなくて、)
音楽を本当に愛してらしたし、自分の歌や音楽を求めてらしたから、
自分の琴線に触れそうなものがあれば、
それが一流アーティストからでも、
一生徒からでも、
街で流れる有線からでも、
貪欲に知りたいし、感じたかったのではないかなと思います。
音楽に対してとても謙虚で素直な方なんだなと思いました。
私も日々、生徒さんから
いろんな話を聞いたり、
知らないアーティストを教えてもらったり、
新しい声の出し方やレッスンの方法などを気付くきっかけをもらったりしています。
ORIONの動画であげている、
「米津玄師」も「星野源」も、
supercellもmiwaもGLIM SPANKYも、
もっともっと、沢山、色々、生徒さんからいっぱい教えてもらいました。
もし、自分が良いと思うものに固執して、その他の世界を全く触れずにいたなら、
成長することなく、またそれに気づかずにいたでしょう。
歌うことも、教えることも、
聞くことも、教わることも、
その本質が『響き合う』ことにあるのなら、
どちらが一方的に提供しその他はただ受け取るだけのではなく、
お互いに教え合い、歌い合い、混じり合っているのだと思います。
つまり、私は、人と響き合うのが好きなのですね。
深く
深く
どこまでも深く響いてゆけたらと思います。
そんな歌を歌い、
そんなレッスンをし、
そんな人生を送ってゆきたい、
と思っています。
そしていろんな人と出会って、
歌で、レッスンで、人生で、
深く響き合いたいなと願っています。