なぜ歌うのか? ③ 「ボク」の場合 ~ORION~

音楽の仕事について20年以上経ちますが、

自分にとって「歌」とは、一体何なのかと、

最近よく考えます。

歌が大好きで、

まだ知らないアーティストを発掘しようと、CD屋さんで衝動的なジャケ買いをしたり、

CDに合わせて裏声でいっぱい歌っていたころ。

ボイストレーナーへの道のり ② 参照 )

当たり前なのですが、今は良くも悪くも当時とはまるで違ってしまったのでしょう。

ただただ、歌が本当に好きでした。

誰かより優れるためでもなく、

誰かに評価されるためでもなく、

歌手になるなどと大それたことを思ってたわけでもありませんでした。

(無意識では歌手になれたらいいなと思ってたかもしれないですが^^;)

ただ、

「歌いたいから歌ってる」

そんなシンプルな気持ちでした。

 

当時はまだカラオケBOXなどもなかったので、

人に歌を聞かせて自慢する機会もありませんでした。

家の中のみならず、学校の行き帰りの電車の中や道端で、

小さい声ながら、心の底から叫んで歌っていました。

かなりキモかったと思います。

さぞかし周りにいた人はイヤな思いをしてたと思います……(^o^;

それでも歌うことは止められませんでした。

歌を通じて、そのアーティストや音楽自体と一体になる感覚が、あまりにも鮮烈だったのです。

この世の価値観を超えたもののように感じていました。

ボクにとって『歌』や『音楽』がまるで一番の親友であり、

それ以上の特別な「なにか」でもあった、

そんな時でした。

「ただただ、歌が好きだ」という頃は、実は悩みの多い時でもありました。

 

まあ、青年期に誰でもあるような当たり前のものなのですが、

自分の容姿や才能のこと、

対人関係や恋愛のことなどで、

いつも悩んでいたと思います。

これは根拠のない勝手な持論なのですが、

歌がうまい人というのは、

こうした悩みを人一倍強く感じる人が

多いと思います。

『歌が上手い人は、不幸な人だ』

そう思っていました。

 

今もそう思っています。(闇の部分を抱えているという感じですが)

 

ボクもそういう人間でした。

 

とりわけ不幸な出来事が自分や自分の周りに起こったわけでも、

強く劣等感を感じる具体的な何かがあったわけでもありません。

ただ、なにかしらいつも「孤独感」や「疎外感」を強く感じていました。

それが歌っているときは違いました。

その音楽の世界やアーティストと一体になることで、

日常では決して感じることの出来ない感覚を体感できました。

とりあえず音楽を聴いたり歌ったりしている時は、

理屈抜きで気持ちよかったのです。

おそらく、人とうまく接せられないことが自分の一番の悩みになっていたのだと思うのですが、

歌を歌っている時は、そんな人と人との壁がいっぺんに吹っ飛びます。

肉体的な個々人を通り越して、自分とみんな、そしてそこの時間や空間全体が一気に繋がる感じです。

 

当時はそこまではっきりと理解してたわけではありませんが、

「何か歌(音楽)には特別なことがある!」

とぼんやり感じていたと思います。

それで、

今はというと、

その歌や音楽が「仕事」となり、

いろんな知識や技術を手にしました。

それでそれなりのお金を頂くことができ、

家族5人の日々の生活を賄っています。

メンタル的にも若い時と比べると圧倒的に対人関係などで悩むことは少なくなりましたし、

 

(というよりは、ただ単に人との付き合いが減っただけかもしれませんけど^^;)

なにより結婚して子供も生まれて、

家族とのつながりを感じることができるようになりました。

ボイスラボを始めてから、体調的な理由で歌を歌う仕事はほぼ無くして、

今は生計のほぼ98%くらいはレッスンという状況です。

音楽への情熱は持ち続けているつもりでも、歌を歌うための機会も気持ちもどんどんと減ってきたと思います。

そんな中、

「自分の歌って一体なんなんだろ?」

と、分からなくなってることがあるのです。
 

生徒さんの精一杯の歌を聞いて、

「偉そうにアレコレ言ってるけど、じゃあ、自分はちゃんと歌を歌えるのか?」

と不安になることもあります。

今まで感じてきたはずの自分の中にある歌への「衝動」がどうしても出口を見つけられなくなるんです。

でも、「衝動」そのものがなくなっている(枯れてしまっている)ようには感じていません。

ただ、心と身体と声が、てんでバラバラで、自分の歌を感じられない状態になるときがあるんです。

これまでボイストレーナーとして、歌や声をあまりにも理知的に処理してきてしまったからだと思います。

歌や声への衝動よりも、呼気量や筋肉の動きといった発声のことを優先して考えるようになってしまった結果なんだと思います。

気が付けば、脱ボイストレーナーへの道のりでもほとんど同じようなことを書いていますね・・・。

その記事から一年半ほど経って、ようやく決意をしました。
 

10年前に歌の仕事から教える仕事にシフトしたわけですが、また歌を歌う方向にシフトチェンジしてゆきます。

意気込みとしての比喩ではなく、生活そのものをもっと歌に寄せてゆきたいと思っています。

ボイストレーナーとしての自分から、歌い手として一歩前に進みだすんです。

ビジネス的に、ボクが歌い手として成立する道があるのか、今の自分にはまったく想像が付きません。

でも、

「やるしかない!」

そう思っています。

それにトライせずに人生を終えてはいけないと思うのです。

もうすでに一般的な人生とは異なる歩き方をしている自分(人より優れてるという意味では全くないです)が、ただ生活を守るような生き方をしていても、何も得るものはないのだと思います。

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ORIONのチャンネルを始めてから、まだ日も浅いですが、だいたい週1くらいのペースでアップしています。

なんとか人前に出せるようにいろんな歌を週一のペースで歌ってゆくと、歌を歌うという感覚が少しずつ戻ってきたような気がします。
 

 

いろんな言い訳無しに、そのままの自分に自信を持って歌ってゆきたいです。

 

上手い自分とか、ボイストレーナーとしての自分とか、いろんな余計なものを脱ぎ捨てて、ウソじゃない歌をどんどん歌ってゆきたいです。

 

 

そして、それが誰かの人生で「何か」を感じるきっかけになってくれたらと願っています。

最後に、最近のORIONの動画を下にいくつか貼っておきますので、よかったら見てみてくださいね!!

最後まで長い文章を読んでいただきありがとうございました!!!

 

 

【歌ってみた・ピアノ弾き語り】Man In The Mirror Michael Jackson / covered by ORION (1番のみ)

 

【歌ってみた・和訳付】Lately Stevie Wonder (Jodeci)/ covered by ORION

 

【歌ってみた】lemon 米津玄師 / covered by ORION(フル歌詞)

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