『最高の声を手に入れるボイストレーニング フースラーメソード入門』

出版社のページ(日本実業出版社)

http://www.njg.co.jp/book/9784534054746/

紹介記事(日本実業出版社)

http://www.njg.co.jp/post-22052/

DVDの一部のYouTube

https://youtu.be/TK23IrUqnBk (声量 響きの基本トレーニング)

https://youtu.be/Uok26U_TLMk (装飾テクニックのトレーニング)

https://youtu.be/4Ae_okFctFo (純粋な裏声と純粋な地声)

https://youtu.be/97XhsweYk_w (音痴をなおすには)

Amazonのページ

https://www.amazon.co.jp/dp/4534054742/

 

武田梵声先生の今年(2017年)2月に出た新著になります。

新著が出ると知って以来、前作ボーカリストのためのフースラーメソードからどのような展開をしてゆくのか、ずっと楽しみにしていました。

2月。

新著が手元に届いて、即、読み出して、冒頭の数ページで感じたのは、

「分かりやすい!」

ということでした。

恐らく、前作『ボーカリストの〜』を読まれた方であれば、皆さん同じような印象を持たれるのではないでしょうか。

前作が出た時、ボイストレーナー仲間の間でみな口々に「難しい……」と呟いていました。

もちろん私にとってもかなり難解な内容で、1ページを読むことにすら苦労する有様でした。

それでも、「他の本とはまるで異なる光を放っている!」とすぐに感じました。

今のボイスラボがあるのもこの本のおかげと言っても決して過言ではありません。

「難解な中にもとても重要なことが書かれてある」という直感は、もちろん私だけではなく、周りのボイストレーナーの方の多くは感じていらしたように思います。

さて、前作の話はさておき、この新著に話を戻しましょう。

この「分かりやすさ」は果たして最後まで続くのか、と私はドキドキしながら読み進めてゆきました。

これまで武田先生の書かれたブログや本、ホームページなどの文章に慣れていた私は、新著での言葉の分かりやすさに驚き、

「これが最後まで続くなら、あり得ないことだ!」

と本当にドキドキしながら読み進めてゆきました。

そして、最後までその「分かりやすさ」は消えることはありませんでした。

武田先生が、自身の知識や考えを広く伝えるために、ここまで平易にされたことに驚き、その決意に感動もしました。

難しい専門書という立ち位置ではなく、フースラーメソードに初めて出会う人や手っ取り早く声が良くなりたいと思ってるような人にも、「入り口」として声や芸能の世界の本質に触れてもらえる、まさに『入門』の書なのだなと感じました。

もちろん平易に書かれているだけでなく、前作『ボーカリストの〜』とは異なる切り口でアンザッツや吸気発声、ガムなどを取り上げてあることで、声に対する新たな視点やより本質的な部分について数多く気付くことが出来ます。

 

実際に今回の本で、

初めて知ったことや

思い間違いに気付けたこと、

なるほど!とか

えーっ!とか

とにかくリアクションの多い本でした。

 
前作が練習用のCDを除き、ほぼ全て文字で説明されていた(しかも難解でした・・・)のに対して、今回の本は、本自体が全体的に分かりやすい言葉で書かれているのに加え、言葉では理解しにくい部分をDVDで実演やデモレッスンを通じて紹介してあり、理解の大きな助けとなっています。

 

実は手元に本が届いた時、私は

「え!今回はDVDなのか・・・。CD(オーディオデータ)の方がスマホにトラックを入れて練習しやすいのになぁ」

と思っていました^^;

ですがDVDを見てみると、スタジオ収録のCDとは異なり、部屋鳴りなども含めた形で映像と共に先生のサンプルを聞くことができるので、CDの音源とはまた違う声の聴こえ方がありました。

CDよりもイメージがより具体的に掴みやすいところがたくさんあり、色んな方向から声を知ることの大切さを知りました。

そういえば、ちょうど昨年末に大阪であった武田先生の個人レッスンの時と声の質感が似ていると思いました。生でレッスンを受けているときに聞こえる声の感じにかなり近いと思います。

初めてフースラーメソードに触れる方には、とても良い本だと思いますし、前作『ボーカリストの〜』をお持ちの方でも、色々気づくことの多い本だと思います。

非常にオススメです!

(ここまでは本の紹介です↑)
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(ここからは独り言です↓)

ボイストレーニングの世界はファッションの世界のように『流行り廃り』が激しいです。

福島英氏、

上野直樹氏、

弓場徹氏、

高田三郎氏、……からの

セス·リッグス氏(流れとしてロジャー·ラブらSLS系統の方たちも含む)

その他いろんな方が、出版を通じてボイストレーニングの世界を賑わしてきました(セス氏の場合は日本においては出版を通じてというわけではないと思いますが)。

そしてそんな中、今はフースラーメソードの流れが来ていると感じているボイストレーニング関係者は決して少なくないと思います。

昨年末に、大阪(首都圏ではなく)で行われた武田先生の講演会に、100人を超えるボイストレーナー(及び芸能関係者)が集まったのは、それを象徴しているでしょう。

先に述べた福島英氏からこのフースラーメソードへの流れは、感覚的·習慣的なものからより正確で科学的なものへの移行なのだと思います。

腹式呼吸ありき共鳴ありきの後付けの「なんちゃって理論」に始まり、喉頭内の筋肉(輪状-甲状筋など)、構音(発音)による喉頭や声帯のコントロールなど、より正確で細かいところにフォーカスされて来ていると思います。

陳腐な言葉ですが、年月を経てより科学的になって来たんだと思います。

でも、その科学とは「声楽」を最高の声とする考えの中で発展してきたものでした。

フースラーメソードに於いては、「どうしたら(声楽的な)良い声が出るのか」という視点からではなく、これまで良いとされてきた声も含め、全ての『声』という現象を生理学的に解明し(もしくは解明しようとし)、声の自由(可能性の解放)を目指しているものだと私は理解しています。

ガラガラな喉声(ガム)や吸いながら出す声(吸気発声)など、およそ普通あり得ないような声(民族音楽などのジャンルでは使われることもあります)も普段出さないからこそ鍛えられる筋肉(神経支配)があります。

むしろ近代以前はそういった声が普通でしたし、言語を獲得する以前(古代)においては言葉の意味によってコミュニケーションが取れない分、声で出来ることは今よりもはるかにすごかったであろうと想像できます。

あらゆる色眼鏡を無くした上で全ての声に対して可能性を見出し取り組んでいるのがフースラーメソードなのだと思います。

量子力学の世界ではありませんが、それぞれの本の著者(量子力学的に言うと観測者)の理念によって事実は異なる現れ方をします。

武田先生がよく仰る「19世紀型ではなく17世紀型でなければいけない」というのは、単に方法論として17世紀のものが優れているというだけでなく、その根底にある「音楽や声に対する価値体系」がより重要な問題だということなのです。

恐れずに言えば、今の『フースラーメソード人気』は、おおむね「ノウハウとしてこれまでのものより優れているらしいぞ」という興味の持たれ方をしている(19世紀型の延長)と私は感じています。

 
より高く。

より大きく。

より短期間に。

 
こうした考えが声を限定し、その可能性を歪曲·矮小化してきました。

 
もし、ボイトレの最終目標が商業的な成功なのだとしたら、「音楽」も「声」も例外なく資本主義的なルール(19世紀型)に従うしかありません。

 
ボイストレーニングの最終目標とは一体何でしょうか?

 
もちろんそれは個人個人異なりますが、ピッチ(音程)、ボリューム(大きさ)、倍音成分(声色)などがある程度ソフトウェアでコントロールできるようになってきた現在、この先「歌い手が声を出す」魅力は一体どこに見出してゆけば良いのでしょう。

私たちは、「声」が本来持っている大きな可能性を取り戻そうとする中で、自らが「存在すること」そのものに迫ろうとしているのかもしれません。

声や音楽に限らず様々な分野で、それぞれが本来持っていた大きな力を取り戻し、もっと自由な生き方や世の中の在り方へと繋がってゆけばと願っています。

話が少し大きくなり過ぎた感じもありますが………。

この武田先生の新著に少しでも多くの人が(もちろん私も含めて)、より本質的な意味において出合えますように。